生き様のドラマ。【映画】『The Judge(ジャッジ 裁かれる判事)』

この映画を観た晩、母の夢を見た。目を輝かせ、楽しそうに話をしている母のそばで、うん、うん、と頷く私。

心は満たされていた。このまま時間が止まればいいのにと思っていた気がする。何の話をしているのか。そんなことはどうでもいい。母は、若い時分に戻ったかのように生き生きと明るく、嬉しそうだった。

話を聞いてあげる。ただそれだけの夢。私はどこか俯瞰で自分の心と向き合っていて、ああ、なんて幸せな時間なんだろう、ずっと続けばいいのにと感じていた。

目覚めると、まだ余韻があった。ぬくもりを逃すまいとして再び目を閉じる。そして、すぐに気づく。ああ、こんな夢を見たのは昨日の映画のせいだ、と。



映画『The Judge(ジャッジ 裁かれる判事)』のメインテーマは、父と息子である。

働き盛りの四十代、都会で成功し弁護士をしている主人公=息子が、母の訃報で帰郷するところから話は始まる。生まれ育ったふるさとは、いつまで経っても何も変わらない田舎町で、主人公の父は長年その町の裁判所で判事をしている。厳格な父である。主人公との仲は良くない。双方ともが敬遠し合って他人行儀で、ぎこちない。家族は他に兄と弟がいる。男3人兄弟である。

家を飛び出したきり、戻って来たくなどなかった。母の葬儀を済ませ、急いで帰ろうと飛行機に乗り込んだその時、父逮捕の知らせが入る。母の葬儀の晩、父の車が、ひき逃げ事件を起こした可能性があるという。父は、何も知らないという。だが、死亡したのは、父がかつて判事として裁いた男だった。

と、書くと、なんだかサスペンスやミステリのように思える。この映画の紹介文で“法廷サスペンス”だとか“まさかの殺人”“無罪にすることができるのか”なんて謳われているが、いささか的外れで、展開するにつれ、そういう要素は単なる舞台設定でしかないことに気づくだろう。

ジャンルで言うなら『ヒューマンドラマ』だ。

この映画が描きたい本筋は、事件だ裁判だ犯人だではないのである。

では何か?

2つある。

1つは「家族」だ。ののしり合って、傷付け合って・・・それでも心の奥底では認め、信じ、愛し、何よりも誰よりも大切に思っている。リアルな、本物の家族の姿だ。エンタメ用の取り繕った家族像ではない。現実社会で、我々が暮らしているのと同じ、本物の家族の姿。それがしっかりと骨太に描かれている。

そして、もう1つは、「男の生き様」だと私は感じた。そう、例えるならこれは侍映画である。侍の心に似た静けさ、プライド、義や道、精神を感じる映画だった。

人は、人として、どこで、どう生きるか。本作が描こうとした大きなテーマであると私は思う。

あともう1つだけ、どうしても書いておきたいことがある。

この映画は、終わり方がいい。

未来に続く物語に仕上げ切っている。

ラストが最高のタイミングでの「カーーット!!」で終わる。私は好きだ。エンディングロールが始まった時、ラストカットの後の世界で主人公がどう生きるか、物語の続きが見えた気がした。映画が終わった後も続いていく彼の人生が見えた気がした。

どこかの町で今も生きている誰かの物語だと感じさせることに成功したわけである。

最後のカット、終わらせ方ひとつで作品に命を吹き込んだな、と私は思った。

計算し尽くされた構成だ……監督誰だっけ? と思わずサイトまで詳細を確認しに行ったほどだ。デイビッド・ドブキン氏(監督/製作/原案)。Check it out!

粋なラストカットだった。私は満たされて、「いい映画だった、観て良かった」とポジティブで幸せな気分になれた。だから、きっと、冒頭で述べたような、幸福感の強い夢を見たのだろう。

皆、誰しもが親の子である。子の親である場合も。

そして家族は続いていく。

ああ、そうか。この点も本作に込められたテーマか。

原作が小説本だったら、映画化されたヒューマンドラマとして多くの人を泣かせるベストセラーになったかもしれない。

MVPはやはり父親役のロバート・デュバル氏だろう。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたのも頷ける。硬すぎず緩すぎず。納得の演技力だった。

主演、主役はロバート・ダウニーJR.氏だ。あれ?シャーロック・ホームズ? あっ!アイアンマンの人か~この手のドラマできるのかな? と最初は少し不安に思った。だがユーモアもあり、シリアスな演技もでき、一気に引き込まれてファンになった。やはり、才能がある。人を惹きつける魅力がある。今後も追いかけたい俳優である。

あ!そうそう、裁判の相手方の検事役に、私の好きなビリー・ボブ・ソーントン氏が出演していた。彼がいるだけで映画に深みが増す。多才な俳優である。Amazonプライム会員特典無料配信中の海外ドラマ『弁護士ビリー・マクブライド』をまだ観てない方は要チェック!


映画『The Judge(ジャッジ 裁かれる判事)』

内容紹介(公式サイトより)

映画史に名を刻むWロバートの演技バトル! スリリングかつエモーショナルな法廷サスペンス

映画『ジャッジ 裁かれる判事』オフィシャルサイト

内容紹介(Amazonより)

判事の容疑は、まさかの殺人。絶縁していた弁護士の息子は、判事の父を無罪にすることができるのか――?

Amazonの紹介文

私はAmazonプライムビデオで吹替版を観た。2020/6/13現時点ではプライム会員特典で無料配信中だ。時間がある時にもう一度、次は字幕版で観てみようと思う。ブルーレイDVDセットなどもある。リンクを貼っておく。ぜひ。

2020年6月 ソラアン



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